明治時代(1868〜1912年)の工芸品は、欧米向け輸出を目的として技術の粋を集めた「日本の手仕事の最高峰」です。七宝・象嵌・彫金・刺繍・陶磁器——それぞれの分野で江戸時代に蓄積された技術が一挙に花開き、パリ万博・ウィーン万博・シカゴ万博を席巻しました。現在の国際競売でも明治工芸は高い評価を受け続けています。
金属素地に仕切り線(クロワゾネ)を施し、ガラス質の釉薬を焼き付ける技法。並河靖之・濤川惣助が世界最高峰の技術を確立。超精密な花鳥文様が特徴
金属・木・石などに溝を彫り、異なる素材を嵌め込む技法。金・銀・銅の象嵌が最高品質。京都の村田整珉、東京の正阿弥勝義が名人として知られる
絹地に立体的な刺繍を施した輸出工芸品。人物・花鳥を精緻な糸で表現。薩摩の「SATSUMA刺繍」はヨーロッパで特に人気を博した
南部鉄器(岩手)に代表される鋳鉄製品。明治期には装飾的な花瓶・香炉・文鎮なども制作。海外向け輸出品は特に精緻な仕上げ
七宝焼は明治工芸の中でも特に高い国際評価を受けるジャンルです。最盛期は1880〜1910年代で、この時期の最高品は現在の国際競売で数百万〜数千万円に達することもあります。
| 作家・窯 | 特徴 | 時代 |
|---|---|---|
| 並河靖之(なみかわやすゆき) | 超精密有線七宝。髪の毛より細い仕切り線。代表作:花鳥文大花瓶 | 明治〜大正 |
| 濤川惣助(なみかわそうすけ) | 無線七宝・絵画的七宝。仕切り線なしで絵を描く革命的技法 | 明治 |
| 旧薩摩藩系窯(鹿児島) | 薩摩ガラスの伝統を引く七宝。色使いが南国的 | 幕末〜明治 |
| 名古屋七宝 | 産業的七宝の中心地。有線・無線の両様式を大量生産 | 明治〜昭和 |
明治政府は欧米との技術格差を埋めるために輸出を重視し、工芸品は重要な外貨獲得手段でした。1867年パリ万博・1873年ウィーン万博・1876年フィラデルフィア万博・1893年シカゴ万博——日本の工芸品は連続して最高賞を受賞し、「ジャポニスム(日本趣味)」ブームを欧米に引き起こしました。この時期に輸出された明治工芸品の多くは現在も欧米の個人コレクションや美術館に所蔵されており、逆輸入の形で日本の骨董市場に戻ってくることもあります。