漆器(ラッカーウェア)は日本が世界に誇る工芸品の一つです。英語で「JAPAN」が漆器の代名詞になったことが、その国際的評価を物語っています。しかし蒔絵・螺鈿・堆朱・沈金といった技法の違いを知らないままでは、その価値の深さに気づけません。技法を知ることが漆器鑑賞の入り口です。
漆が乾く前に金・銀・貝粉を撒いて絵を描く技法。平蒔絵・高蒔絵・研出蒔絵の3種があり、高蒔絵は立体的な盛り上がりが特徴。日本独自の技法
夜光貝・アワビ・蝶貝などの薄片を漆面に埋め込む技法。貝の虹色の輝きが独特の美しさをもたらす。中国・朝鮮でも発達した技法
赤漆を何十層も重ねて厚く塗り、固まったら彫刻を入れる中国系技法。「彫漆(ちょうしつ)」の一種。鎌倉彫が代表例
漆面に細かい溝を彫り、金箔・金粉を埋め込む技法。輪島塗の代表技法の一つ。精細な線描が特徴で版画的な美しさがある
黒漆を塗った上に朱漆を重ね、使用により朱漆が摩耗して黒漆が見える経年変化の美しさが特徴。和歌山・根来寺の寺院器が発祥
麻布に漆を塗り重ねて形を作る技法(脱乾漆)、または木型に漆と土を塗り重ねる技法(木心乾漆)。奈良時代の仏像に多い
| 産地 | 代表技法 | 特徴 |
|---|---|---|
| 輪島(石川) | 沈金・蒔絵・布着せ | 「輪島塗」の堅牢さは日本最高峰。下地に布を貼る「布着せ」で強度を確保。人間国宝多数 |
| 会津(福島) | 蒔絵・堆漆 | 江戸時代に藩が推進した産業漆器。堅牢で実用的。「会津塗」は民芸漆器の代表 |
| 鎌倉(神奈川) | 堆朱・鎌倉彫 | 「鎌倉彫」は13世紀に禅宗寺院で始まった彫漆の一形式。観光土産としても著名 |
| 京都 | 蒔絵・加飾全般 | 「京漆器」は細工の優雅さと加飾の多様性が特徴。茶道具・香合・文箱の名品が多い |
| 木曽(長野) | 木地呂(きじろ)塗 | 木目を活かした透き漆仕上げが特徴。「木曽漆器」は実用器として質実剛健な美しさ |
⚠ カシューとウレタンに注意:安価な漆器はカシュー(合成漆)やウレタン塗装で作られています。本物の漆か確認するには、爪で強く押したときの感触(本漆は柔らかく粘り感がある)や、比較的新しい面への光の反射パターンで判断できます。
漆器は乾燥が大敵です。適切な湿度(50〜60%)を保ち、直射日光・高温を避けることが基本です。使用後は柔らかい布で水分を拭き取り、桐箱や布袋で保管します。食器として使用する漆器は食洗機厳禁、熱湯も漆に負担をかけます。