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備前焼の見方入門
火襷・牡丹餅・胡麻の窯変を読む — 釉薬なしの至高の焼き締め陶

備前焼(岡山県備前市)は釉薬を一切使わず、木灰と炎だけで1200〜1300℃で焼く「焼き締め陶」だ。窯の中の偶然の炎の流れ・藁灰の付着・炭素の還元が器の表面に複雑な表情(窯変)を生む。この予測不可能な自然の産物こそが備前焼の本質であり、鑑賞者は「炎が描いた絵」を読む楽しみを持つ。

備前焼の歴史

備前焼の起源は平安時代末期(11〜12世紀)の須恵器(すえき)に求められる。岡山県南東部の備前地方(特に伊部〈いんべ〉周辺)の良質な陶土(備前土)を使い、穴窯で焼く伝統が続いてきた。

陶芸史の頂点は桃山時代だ。茶の湯ブームを背景に、千利休が「備前の焼き締めの素朴さ」を侘び茶の道具として高く評価し、茶人・武将たちが競って備前の壺・水指・花入を求めた。この時代の備前焼は「古備前(こびぜん)」と呼ばれ、現代の骨董市場でも最高格付けを受ける。現代の人間国宝では金重陶陽(かねしげとうよう)・藤原啓(ふじわらけい)・山本陶秀(やまもととうしゅう)などが知られる。

窯変図鑑

HIDASUKI
火襷(ひだすき)
ひだすき
焼成前に藁(わら)を巻き付けて焼くと、藁の跡が赤〜橙色の線として残る。炎色の縞模様が器に自然な動きをもたらす。備前焼を代表する窯変の一つ。
BOTAMOCHI
牡丹餅(ぼたもち)
ぼたもち
他の器を重ねて焼くとき接触面に生まれる円形の黒い痕。「牡丹餅」の形に似るためこの名がある。偶然の配置が生む一点ものの景色。
GOMA
胡麻(ごま)
ごま
窯内の松灰(まつばい)が溶けて器の表面に付着し、緑〜黄〜茶色の斑点を作る。胡麻(ごま)を振りかけたように見える自然な釉掛かり。
SANGIRI
桟切り(さんぎり)
さんぎり
窯の床に直置きして焼いた底部が、炎の流れで焦げた状態。青〜黒〜灰色の複雑な色が出る。「桟切」と呼ばれる棚の切れ端が関係するとも言われる。
AO-BIZEN
青備前(あおびぜん)
あおびぜん
還元焼成(酸素を制限した焼成)による青〜灰色の発色。通常の緋〜赤褐色の備前とは対照的な静謐な色調。希少なため高い評価を受ける。
KAKIOTOSHI
掻き落とし(かきおとし)
かきおとし
焼成前の土に竹串で文様を彫りこむ技法。備前の素地に彫刻の要素が加わる。古備前には少なく、現代作家が表現手段として多用。

窯の種類と焼成方法

窯の種類特徴窯変への影響
穴窯(あながま)古代から続く傾斜地に掘った窯。薪を多量に焚く。1〜2週間以上の長期焼成が多い最も複雑な窯変が生じる。桃山時代の技法に近い。火襷・胡麻・桟切りが出やすい
登り窯(のぼりがま)複数の窯室が坂を登るように連なる。効率的で多量生産が可能安定した品質。火襷や胡麻も出るが穴窯より均一傾向
電気窯・ガス窯現代の工業的生産に使用。温度管理が精密窯変が生じにくい。均一な発色が得られる。骨董価値は低い

備前焼を「見る」6つの視点