扇子・うちわの見方入門
— 京扇子・江戸扇子・扇面絵の鑑賞ポイント
扇子(せんす)は日本が世界に誇る折りたたみ式の発明品です。平安時代に日本で生まれた「桧扇(ひおうぎ)」を起源とし、「蝙蝠扇(こうもりおうぎ)」が中国・朝鮮を経て西洋に渡り、今日の西洋扇子(エヴァンタイユ)の祖先になりました。一枚の扇の中に、骨の工芸・紙の染め・絵画・書の競演があります。
扇子の基本構造
扇子の構造:①要(かなめ):すべての骨を貫く金属・象牙・鹿の角の軸②親骨(おやぼね):両端の厚い骨③中骨(なかぼね):内側の細い骨(本数が多いほど良品)④地紙(じがみ):扇面に貼る和紙・絹⑤扇面(せんめん):絵・書・金銀装飾が施される表面。骨の本数は「一本」と数え、茶扇5本・能扇15〜16本・舞扇・踊り扇は用途で異なります。
京扇子と江戸扇子の違い
| 種類 | 特徴 | 代表的用途 |
|---|---|---|
| 京扇子(きょうせんす) | しなやかな竹骨・精緻な金銀加工・華麗な絵付け。分業制で制作 | 茶道・能楽・舞踊・贈答 |
| 江戸扇子(えどせんす) | 堅牢な骨・実用的な構造・粋な絵柄。職人一人が制作することも | 日常使用・落語・歌舞伎 |
| 名古屋扇子 | 骨の堅さと実用性。三河の竹を使う | 日常・踊り |
扇面絵(せんめんえ)の鑑賞
扇面に描かれた絵・書は「扇面画(せんめんが)」として独立した芸術分野です。扇の形(末広がり)に合わせた構図と、和紙・金銀箔の地紙を活かした表現が独自の美を生みます。大和絵・水墨・四季花鳥・和歌・仮名書きなど多彩な表現があります。古い扇面は額装して掛け軸の形で鑑賞されることも多く、「扇面屏風」として複数の扇面を貼り交ぜた屏風も存在します。
著名絵師の扇面
俵屋宗達・本阿弥光悦・尾形光琳・酒井抱一ら琳派の絵師が扇面に残した作品は、骨董市場でも高評価を受けます。扇面は小さな画面の中に絵師の様式が凝縮され、真贋確認には落款・印章と図様の整合性確認が必要です。
能楽扇・茶扇の世界
能楽扇(中啓・舞扇)
能楽では演者が持つ扇が役柄・場面によって異なります。「中啓(ちゅうけい)」は開くと骨先が開いたままになる特殊な構造で、神・翁・公達の役に用います。能楽扇の骨・地紙・文様は「観世・宝生・金春・金剛・喜多」の五流によって規定されており、流派の識別に用いられます。
茶扇(ちゃせんす)
茶席で亭主・客が膝の前に置く扇。実際に使うのではなく礼儀の「境」を示す道具です。茶席の格式によって骨の本数・素材・地紙の装飾が決まり、数寄屋袋と組み合わせて茶道の調度として扱われます。
うちわの産地
| 産地 | 特徴 |
|---|---|
| 房州うちわ(千葉) | 丸竹の柄と骨が一体の「丸竹(まるたけ)」。経済産業大臣指定伝統工芸品 |
| 丸亀うちわ(香川) | 国内生産量の9割以上を占める。竹骨に和紙を貼る一般的な形式 |
| 京うちわ(京都) | 柄と骨が別々の「差し柄(さしえ)」。豪華な絵付け・染め地紙が特徴 |