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古地図・絵図の見方入門
江戸の絵図から西洋古地図まで——地図に宿る時代の視点

古地図は、地理情報だけでなく当時の人々の世界観・政治情勢・技術水準を映し出す貴重な歴史資料です。骨董・古書のジャンルでは比較的入門しやすく、インテリアとしての需要も高いカテゴリです。江戸時代の城下町絵図・国絵図から、オランダ・ポルトガルが描いた17世紀の日本図まで、古地図の世界は地域・時代・制作目的によって多彩な表情を見せます。

日本の古地図の種類

種類時代・制作者特徴
国絵図(くにえず)江戸幕府命(正保・元禄・天保)各藩が幕府に提出した領国の絵図。道・村・寺社が詳細に記載される
城下町絵図江戸〜明治期城下町の区画・武家屋敷・寺社の配置。旧城下町の地域で多く出回る
道中図(どうちゅうず)江戸期東海道・中山道などの街道地図。旅人向けで情報量が多い
伊能図(いのうず)1800〜1821年 伊能忠敬日本初の実測地図。精度が現代測量に近い。複製・版本が多く流通
絵図(えず)全般江戸期名所絵図・宮城(皇居)図・寺社境内図など多様な用途の絵図

西洋が描いた日本の古地図

16〜19世紀に欧州の地図制作者(カートグラファー)が描いた日本図は、当時の地理認識・日本との交流史を示す貴重な資料です。骨董市場でも需要が高く、状態の良い彩色版は相当な価格がつきます。

主要な制作者と特徴

アブラハム・オルテリウス(1527〜1598、オランダ):「テアトルム・オルビス・テラルム(世界の舞台)」1570年版が世界初の近代的地図帳。日本を「IAPAN」として描いた初期の西洋地図の一つ。

ヤン・ヤンスゾーン・ワーゲナール(オランダ、17世紀):オランダ東インド会社(VOC)の情報を基にした精度の高い日本図・アジア図。「Speculum Nauticum(航海の鏡)」。

ヨアン・ブラウ(1598〜1673、オランダ):「Atlas Major」(世界大地図帳)の制作者。彩色された豪華な版本が現代でも高額で取引される。日本図の精度が当時最高水準。

フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト(1796〜1866、ドイツ):出島勤務の医師として日本の地図・博物情報を収集。「NIPPON」(1832〜52年)に精密な日本地図を掲載。国外持ち出しを禁止された地図を持ち出したことが「シーボルト事件」に。

「日本が逆さ」の古地図:16〜17世紀の西洋地図では、日本が現在と上下逆・左右逆に描かれているものが多い。これは当時の情報が限られていたため。北が上ではなく東が上に描かれているケースもあり、「どの方向が上か」を確認することが時代判別の手がかりになる。

古地図の真贋と状態評価

本物の確認ポイント

紙の経年と質:17〜19世紀の古地図は和紙または欧州の麻・コットンペーパーを使用。経年で黄変・褐変し、透かすと繊維が見える。現代の複製品は均一で白い紙が多い。

版木の摺り跡(木版地図):木版刷りの地図には版木の木目・見当合わせの跡が残ることがある。エッチング(銅版)地図は細かい線の集合で描かれ、拡大鏡で確認できる。

手彩色(てさいしき):印刷後に手作業で着色された地図は、彩色が版の輪郭と微妙にずれることが多い。均一すぎる現代印刷と区別できる。

折り筋(おりすじ):古地図は畳んで保管・携帯されることが多く、折り筋があることが多い。折り筋は時代の証拠でもある。

状態評価

汚れ・水シミ:古い文書には茶色い水シミ・カビシミが発生することがある。インテリアとして使う場合は軽い汚れは「味」として受け入れられるが、コレクションとしては大きなシミは価値を下げる。

虫食い(むしくい):本紙に穴がある状態。修復可能だが価値を下げる。

彩色の褪色:手彩色の颜料は経年で退色する。鮮やかな発色が残っている作品は希少。

古地図の保管とインテリア活用

額装(がくそう):古地図を額に入れて壁掛けにする際は、UVカットガラス・アクリルを使用することで日光による退色を防ぐ。和紙の地図は湿気に弱いため、防湿処理も重要。

掛け軸仕立て:日本の絵図は表具師に依頼して掛け軸に仕立てることができる。床の間や書斎に飾ると雰囲気が出る。

複製品の活用:真物の古地図は高価なため、博物館発行の精巧な複製品をインテリアに使う方法も。複製品であることを明示した場合は問題ない。

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まとめ

古地図は「地理情報」と「当時の世界観」が同時に記録された唯一無二の資料です。江戸の城下町絵図・道中図・伊能図という日本地図の発展史と、西洋のカートグラファーが描いた「外側から見た日本」を対比することで、古地図の見方が格段に豊かになります。紙の経年・摺り跡・手彩色の確認で真贋を見極め、お気に入りの一枚を見つけてみてください。